新型コロナウイルス感染症の拡大は一定の収束を見せる一方で、社会に大きな影響を及ぼしました。特に経済活動への影響は大きく、非正規雇用や不安定な就労状態にある人々には失業や収入減という形で皺寄せが及びました。

2021年「ふっとばそう貧困in練馬実行委員会」を結成

NPO法人わかちあい練馬(以下、当法人)は2021年に「ふっとばそう貧困in練馬実行委員会」として結成され、フードパントリーや福祉事務所、社会福祉協議会の職員、他地域のNPO法人、医療生協、労働組合と協力して、健康・くらし・しごとに関する相談会を2回実施しました。来場者は200人を超え、これまで池袋や新宿、渋谷など都心部で見られた様相が練馬でも目の当たりにしたことに衝撃を受け、地域で困窮者を支える仕組みづくりの必要性を強く感じました。

駆けつけ支援、相談・宿泊・食料提供を実施

新型コロナウイルス感染症の拡大は一定の収束を見せる一方で、社会に大きな影響を及ぼしました。特に経済活動への影響は大きく、非正規雇用や不安定な就労状態にある人々には失業や収入減という形で皺寄せが及びました。

しかし、このフードパントリーや相談会は平成つつじ公園を貸し切るという規模の大きいイベントで、人的資源や財政面で年2回を超えて実施するのは困難でした。そこで複数回にわたる議論を経て、将来的にはサポートセンターを設置し、いつでも相談に応じられる体制を構築すること、またフードバンク・パントリーを開設する方針を決定しました。それが実現するまでの間は、当法人ウェブサイトの相談フォームや電話での受付、必要に応じた駆け付け支援、宿泊場所や食料品の提供、月1回の相談会を実施することとしました。

光が丘公園の夜回りで5名の方が路上生活から脱出

この間、区内住民から「光が丘公園に路上生活状態にある人がいる。心配している。」という連絡があり、路上アウトリーチ(夜回り)を開始しました。毎週月曜日(初年度は金曜日)に公園や駅、団地周辺で路上生活状態にある方に声をかけ、食料とチラシを手渡し、信頼関係を築いたのちに路上からの脱出を希望する方には宿泊場所の提供や福祉事務所などへの同行を行いました。これまで5名の方が路上生活から脱出し、そのうち3名が脱出を希望したきっかけは、近隣住民からの嫌がらせでした。

傷ましく許し難い、嫌がらせるホームレスの方の死

寝泊まりしていた東屋に自転車で突っ込まれたり、大声で怒鳴られたりする被害を受け、公園が安心して過ごせる場所ではなくなりました。嫌がらせが始まった直後に亡くなった方もおられます。東屋にいられなくなってしまったことで、屋根がなく雨に打たれる場所でしばらく寝泊まりをされていました。心配していましたが、元より私たちとの接触を望まれず他の路上生活状態にある方から間接的にお話を伺うという状況が続いていました。そしてとある日の夜回りで、同じく路上生活状態にあった方から「今朝外で亡くなった」と聞きました。とても痛ましく、許し難いことでした。

行政部局に追い出しでなく自立支援の趣旨にそった改善を申し入れる

毎週月曜日夜のアウトリーチ(夜回り)

この嫌がらせには一部公園サービスセンターも関わっており、連日の苦情を受けて「寝泊まり禁止」のチラシを東屋に貼っていました。私たちは区議や都議に協力を求め、東京都の関係部局に直接改善を申し入れました。現在、夜間警備を委託された民間警備会社と情報交換を行うことができており、追い出しと受け取られないよう留意するよう指定管理者から求められていることを確認しています。ホームレス自立支援法では、「都市公園その他の公共の用に供する施設を管理する者は、当該施設をホームレスが起居の場所とすることによりその適正な利用が妨げられているときは、ホームレスの自立の支援等に関する施策との連携を図りつつ、法令の規定に基づき、当該施設の適正な利用を確保するために必要な措置をとるものとする。」と定められています。クレームに応じてポスターを貼るなどといった追い出しを助長する対応は適切ではなく、今後も指定管理者の動向を注視し、本人が望むタイミングで支援が行えるよう、アウトリーチ活動を継続していきたいと考えています。

「ふらっとほーむ石神井」を開設。相談室、フードバンク・パントリー、「だれでも食堂」をオープン

栄養満点の「だれでも食堂」の定食(毎週月曜日

さて、このたび当法人はサポートセンター「ふらっとほーむ石神井」を開設しました。居場所づくりや障害者支援で活動しているNPO法人ハッピーひろばの移転に際し、スペースを引き継ぎました。構想に基づき相談室とフードバンク・パントリーを設置し、さらに温かい食事を提供できる「だれでも食堂」を開設しました。毎週月曜日の19時30分から21時30分(最終金曜日は18時30分から21時30分)、ボランティアや地域住民から寄付いただいた野菜を使って栄養満点の定食を提供しています。

これまではこちらから「出向く」アプローチで、緊急的な介入が中心となっていました。これからは繋がりつつ見守るといった食堂やフードバンクなどの「待ち」のアプローチも可能となりました。必要に応じて、柔軟に活動の形を変えつつ、引き続き地域福祉への取り組みを進めていきます。

今後ともご支援のほど、よろしくお願いいたします。

この記事を書いた人

幸田 良佑

NPO法人「わかちあい練馬」事務局長